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JEMCO通信

2026-09-30 コンサルティング トピックス

【人と組織の未来研究会】元パナソニック専務・榎戸講師と考える(1)弱者だからこそ、小さな池を作ろう

文責:株式会社西雄大事務所 代表取締役 西 雄大

パナソニックで代表取締役専務を務め、現在は人を大切にする経営学会の理事として、自身が創業した創援にて、中小企業の支援に取り組む榎戸康二氏。ジェムコ・コーオペレーションズ主催のセミナー「人と組織の未来研究会(東日本は2026年11月12日(木)、西日本は2026年12月10日(木)から開催)」の初回と4回目の講師を務めていただきます。
2回に分けてお届けするインタビューの前編は、米国で赤字のパソコン事業を立て直した経験から生まれた「弱者の戦略」について伺いました。中小企業が勝つには、小さな池の大きな魚になることだといいます。

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https://www.jemco.co.jp/seminar/2026jcworkshop/


米国で感じた「メダカがサメと戦っているようなもの」

――米国でパソコン事業を担当されていた当時、卸との取引をやめて業務用に振り切ったそうですね。何を捨て、何を得たのでしょうか。

榎戸康二氏(以下、榎戸氏)――はい。当時好調だったプリンターの販売ルートに安易に乗せたところ、痛い目に遭いました。大量の流通在庫を作ってしまい、販売支援金をつけたところ、売り上げより赤字の方が大きくなってしまった。その後いろいろ試しましたが、何ひとつうまくいかない。かなりボロボロになりましたが、ある時吹っ切れたんです。メダカがサメと戦っているようなものだ、こんなやり方でうまくいくわけがないと。開き直って販売網を解約することにしました。

――大胆に見直したのですね。

榎戸氏――はい、3社だけ残しました。3社に共通していたのは、保険会社向けの販売システムを作っていたことです。パナソニックの製品が壊れにくく品質が高いことを評価して、うちの製品を使ってくれていたのです。多くの販売代理店は納入価格の話ばかりされますが、パナソニックの製品では対抗できません。それなら品質の高さを買ってくれる顧客を探そうと考えました。
 ここからメダカの奮闘が始まります。技術者と一緒にいろいろな会社を回ってヒントを探すうちに、ガスのフィールドサービスを手がける会社を訪ねました。現場では工具箱の上に無造作にパソコンを置いて使っていて、「壊れないパソコンは作れないのか」と相談されました。ホコリにも衝撃にも耐えなければならない。パソコンを使うには劣悪な環境です。同行した技術者がやる気になり、ぜひやってみたいと実現できたことが突破口となりました。電気工事業界に評判が広がり、さらに消防署にも採用いただきました。結果として、市場として一番大きくなったのが警察です。どの現場も求めていたのは価格ではなく「壊れない」という品質でした。ようやく勝ち筋が見えました。

まずは「自分が弱者(メダカ)であることを認識」

――既存の販売手法を捨て、自社の強みを見直したわけですね。それにしても、パナソニックが弱者というのはイメージしにくいです。

榎戸氏――日本では考えられませんが、当時の米国のパソコン市場でパナソニックは全くといっていいほど知られていませんでした。販売量でも価格でもサメとは勝負にならない。自分が弱者(メダカ)であることをまず認識することから始めないといけなかった。代理店網をほとんど解約した時は、日本の本社から「何をやっているんだ」とめちゃくちゃ怒られましたよ(笑)。

――ちなみに、人材も資金も乏しい中小企業にも当てはまりますか。大企業との違いは。

榎戸氏――企業規模は関係ないですね。私は中小企業こそ弱者の戦略を取らないと、有効な市場開拓はできないと考えています。私はこれを「小さな池の大きな魚になる戦略」と呼んでいます。

小さな池の大きな魚になれ

――面白い表現ですね。「小さな池の大きな魚」とはどういうことでしょうか。

榎戸氏――小さな池を自分たちで定義して、サメに食われないようにそこで大きな魚になる。成長したら隣接する池を探す。先ほどの例でいけば、品質の高さで勝負すると定義し、ガスや電気工事の業界から消防、警察へと広げていきました。警察では彼らのオペレーションに深く入り込み、さまざまな付加価値を提供して、池自体を広げていきました。

――大きな池ならサメが狙いに来る。でも、小さい魚しかいない池なら自分たちが勝てる、ということですね。

榎戸氏――そうです。誰も気にしていない池ですから。大企業の新規事業も全く同じです。この間もある大企業の役員研修で話しましたが、市場で3位、4位のシェアを獲得していると強者の「つもり」になっている。でもどのような池なのかを定義すると、弱者にもなります。こうした分析を徹底的にしないと、次の具体的な手が打てません。池を定義することが本当に出発点です。ところが、できていない会社が多い。漠然としているんです。参加者の皆さんとも議論したいところです。

・・・
次回は、弱者の戦略を徹底する難しさ、社員を守るか利益を守るかという難問、そして榎戸氏が大切にする「経営の動体視力」について伺います。

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