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JEMCO通信

2026-10-02 コンサルティング トピックス

【人と組織の未来研究会】元パナソニック専務・榎戸講師に学ぶ(2)社員を守る経営の「動体視力」

文責:株式会社西雄大事務所 代表取締役 西雄大

パナソニックで代表取締役専務を務め、現在は人を大切にする経営学会の理事として、自身が創業した創援にて、中小企業の支援に取り組む榎戸康二氏。ジェムコ・コーオペレーションズ主催のセミナー「人と組織の未来研究会(東日本は2026年11月12日(木)、西日本は2026年12月10日(木)から開催)」の初回と4回目の講師を務めていただきます。後編は、経営者の決断、社員と利益の両立、そして経営の動体視力について伺いました。

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https://www.jemco.co.jp/seminar/2026jcworkshop/


弱者の戦略は「失うものがなかったから」

――前回伺った弱者の戦略ですが、この戦略は誰かに習ったのですか。

榎戸康二氏(以下、榎戸氏)――いや、自分の体験から整理しました。米国へ赴任したのが29歳で、事業が軌道に乗ってきたのは30代半ばでした。とにかく苦しくて、もがいているうちに見えてきたという感じです。教科書的にはオンリーワン戦略やニッチ戦略と言われています。ただ実践すると、徹底できないのです。商品から販売、サービス、取引先の扱い方、組織運営、人事戦略まで、すべてのベクトルをその戦略に合わせないとうまくいきません。そうしないと、すべてが中途半端になってしまいます。この徹底度合いの差が、成功と失敗を分けるのです。

――榎戸さんは、なぜ徹底できたのですか。

榎戸氏――前回お話ししたような状況で、失うものがなかったからです。大企業だと、儲からない市場を捨てて集中するには、すごい勇気がいるものです。だから本気で新規事業をやるなら、開発から販売、サービスまで1人が意思決定できる小さな組織にしなさいと経営者に勧めています。社内外の外注を使ってもいい。あちこちから口を出されると、中途半端な戦略になってしまう。中小企業の場合は経営者自身が決めることなので、その点では徹底しやすい面もあると思います。

経営者の胆力が問われる“決断”

――経営者の決断という点では、社員を守るか、利益を守るか。そんな局面に見舞われた時、経営者はどう判断すべきでしょうか。

榎戸氏――会社が潰れてしまったら元も子もないから、最後の手段として社員を減らす。表層的にとらえれば当たり前の話ではあります。でも経営者がよく使う言い訳にしか聞こえません。その証拠に、私が理事を務めている人を大切にする経営学会に参加される経営者の皆さんは、人材育成に目を見張るものがあります。
社員が自社ではできない成長を求めるなら、喜んで卒業させ応援する。ただし、会社が要らないからといって解雇することは絶対にしません。こちらの都合で社員を犠牲にするのは、自分の経営を否定するようなものだというとらえ方です。
あらゆる手段を尽くして社員を守ることの優先順位が高い。結果的に利益に対する意識が強く、万が一のためにキャッシュをきっちり貯めている。会社が潰れないような努力を日ごろからしていますね。

――経営者の胆力が問われますね。

榎戸氏――そうです。前回、経営にはやり方とあり方があるとお伝えしました。経営者のあり方が経営のスタイルそのものに表れるのです。

「経営の動体視力」とは

――榎戸さんは「経営の動体視力」という言葉を使われていますね。

榎戸氏――はい。私の造語です。体験したのは2008年のリーマン・ショックの数年前のことです。何かおかしいと思って、採用を一回止めたのです。業績が絶好調のなかの決断だったので、みんなにめちゃくちゃ怒られました。
でも、経営者の姿勢として、景気の良い時に採用した人を景気が悪くなったからといってクビにするのは、動体視力がないと言っているようなものです。本当に社員を守ると決心していれば、調べ尽くして知っていて当たり前です。社員の人生をお預かりしている立場からも、想定外という言い訳を使ってはいけないのです。

――未来を予測するということですか。

榎戸氏――予測とは少し違いますね。例えるならプロスポーツ選手が、自分に向かってくる剛速球でもスローモーションのように見える感覚です。ゆっくり見えるので、十分な時間をもって対応できる。経営の動体視力は鍛えられます。

――いいですね。鍛えるためにどのようなことをされているのですか。

榎戸氏――私の場合は3つの情報を常に追いかけて鍛えています。地政学、マクロ経済、そしてテクノロジーです。この3つを見ていると、大きな変化が見えやすいと思ってやってきました。今は3つとも大変な変化の渦中にあります。

――動体視力を鍛えることが、胆力を鍛える近道かもしれませんね。

榎戸氏――そうかもしれません。あとは、胆力の根本にあるのは経営者のあり方です。ぶれない思想の軸を持っていると、世の中のいろんなノイズに惑わされない。自分のやるべきことがいつも明確になる。軸のある人は振り回されないんです。

「人と組織の未来研究会」に参加される方へ

――受講者の皆さんへの期待を教えてください。

榎戸氏――いつも経営者の皆さんに伝えているのは、経営には「あり方とやり方」の2つがあるということです。ご自身の中で切り分けてほしい。というのは、手段と目的が入れ違っているケースが多いからです。利益の追求を例にしましょう。利益そのものが目的ではなくて、その事業で何をしたいかで始めたはずです。それがいつの間にか利益が目的化してしまう。そもそもなぜ自分は経営をしているのかを忘れてしまう傾向がある。つまり、あり方をなくしてしまうんです。あり方、つまり自分の価値観が明確に確立していると、やり方の実現性も高まるという実感があります。そのあり方の中には、人間力を高めることも含まれています。

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