JEMCO通信

「グローバル展開」の現場から

グローバル展開の現場から|海外でよくある問題と対応|第三回 盗難問題について

文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 高橋功吉

 

前回までは、海外でよく発生する不正に対する対策例を述べた。今回は、盗難問題について述べることにする。

新興国であれば、どの国でもよく発生する問題の一つである。あまり喜ばしいことではないが、盗難は民度も低いのでやむをえないと言っていたのでは経営にはならないので、しっかりと盗難対策をすることは大切だ。

とりわけ、日本から初めて新興国に赴任する出向者は、盗難に対して意識が薄いことが多い。赴任前に、これらの実態についてはしっかりと理解して赴任してほしい。 

 

◆先ずは教育

 先ずは、従業員への教育は基本事項と言える。盗みが発覚すれば当然、懲戒処分になるといったことを含めて、盗難するということがいかによくないことかは採用時と共に、定期的にも教育しておきたい。

また、各職場の責任者に対して、盗難されないように管理するのは責任者の仕事だということも教育しておくことが大切である。すなわち、鍵をかけて保管しないといけないものは何か、その管理のルールはどうしなけ

ればならないかといった、管理の基本を徹底するということだ。

◆5Sの徹底が基本

 実は、5Sが徹底できているところは、盗難が少ない。中でも、整頓の基本となる3定(定位置・定品・定量)と表示・標識が徹底されていると、すぐに無いということがわかるからだ。すなわち、どこに(定位

置)、何を(定品)、いくつ(定量)が一目でわかるようになっていれば、即座に無いことがわかると共に、それを管理する管理責任者の写真と名前を掲示しておくことで、ものが無くなったら、誰の責任かが明確にな

ることで、資産の管理責任者としての意識も芽生えることになるからだ。

逆に5Sができていない職場では、何がいくつあるかも一目でわからないことから盗難にあってもわからず、盗み放題の職場ということになる。5Sは単に生産性や品質、また、安全ということだけではなく、資産管理

の基本であり、盗難できない環境を作るということでも極めて大切なのだ。
 

◆休日対策は大切

ところで、盗まれるのは、通常の操業時ではなく、休日が多い。特に、設備や建物等のメンテナンス等で外部業者が入る際は、十分な注意が必要だ。入門時に指定場所以外には入らないように責任者に指示すると共に、

立ち会い者をつけることも大切だ。また、盗難で多いものとしては、検査機や測定器具、パソコン等、小さいが高額なものが狙われやすい。売却すれば良い価格がつくからである。これらのものについては、日頃から作

業終了後には鍵のかかるロッカー等に収納する等、管理方法を決めて盗まれることがないような対策が必要である。


◆監視カメラ等の設置

 常時、従業員を監視するということは、従業員を信頼していないということになるので、監視カメラの設置には抵抗感があるということもあるが、国によっては、盗難対策として、監視カメラの設置が必要なケースは

多い。実際、監視カメラの設置には費用がかかるが、これによる抑止効果が大きいのは事実である。

 

新興国の場合、国にもよるが、始めから盗難はあるもののという前提で、対策をするということも必要ということだ。実際、入出門時のチェックだけでは盗難が見つけられないことが大半で、それぞれの国の実態に即し

て対策を変えることも必要と言える。


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