生産の基本論~ものづくりの達人になるためにおさえるべきツボ~【第54回 検査のポイント④】
文責:ジェムコ日本経営 コンサルタント 原 正俊
皆さんは、「IE」という言葉をご存じでしょうか?IEは、Industrial Engineering の略称で「生産工学」などと呼ばれ、「生産性向上」と「原価低減」を行うものです。ジェムコでは、「IE」の考え方に関する情報をコラムでお届けしております。
今回は、「第54回 検査のポイント④」についてです。
タイの工場での話
タイの工場へ支援に行ったときのことです。
成形機のそばで大勢の作業者が検査を行っています。品質にいろいろ問題があったようで、全品を検査しています。ところが観察していると、成形機の加工サイクルより検査サイクルのほうが短いので作業者が待ってしまっています。成形機の品種切り替えのとき検査員は、他の工程へ応援に行きます。
また、頻繁に検査員が入れ替わります。ということは、検査員は特に特定の製品の検査というように固定されておらず、どの製品でも検査できるようになっているということです。
検討したのが「検査の集中化」
これを見て、工場スタッフと考えたのが検査の集中化です。現状では成形機ごとに、検査テーブルと検査の治具などを用意しています。検査員の数だけあるのでかなりの数です。
これをベルトコンベアーを活用して、すべての製品の流れが一箇所に集中するようにしました。ここを検査ポイントとするわけです。検査員をここに集約して、流れてきたものをどれでも検査するようにしました。こうすることで検査待ちのロスがなくなり、稼働している成形機の台数に合わせて、流れてくる製品の数に合わせて適切な人数の検査員を配置するようにしました。
「検査の集中化」によるメリットは?
メリットとして下記のようなことが生まれました。
①検査員の人数が最適にできる
②検査のための治具やテーブルを集約することでスペースと数を減らすことができる
③検査のための取り置き、移し替えといったロスがなくなる
「検査の集中化」によるデメリットは?
逆にデメリットとしては、「作業員同士の干渉」と、「流れてくる製品がコンスタントでないこと」によるロスです。これはバッファを設けることで解消しました。
検査の集中化は効率を高めますが、検査員の高い能力が求められるのでハードルは高いかもしれません。検査は聖域と考えている工場も多い中で、検査も効率化を狙わなければならないのはもちろんのことです。勇気を持って現状を打破しましょう。