AI時代に問われる人間力【第1回】なぜ今、世界が人間性について語り始めているのか
文責:ジェムコ・コーオペレーションズ 松村潔
2026年5月、バチカンから一つの重要な文書が世界へと発信されました。
Magnifica Humanitas(人間性の偉大さ)
バチカンか発信された文書とは、教皇レオ14世による回勅『Magnifica Humanitas(人間性の偉大さ)』です。テーマは「人工知能の時代における人間の尊厳の保護」。その発表の場には、AI企業の経営者や研究者たちも招かれていました。
教皇は静かな口調で、しかし力強く語りました。「技術の進歩そのものではなく、その時代に人間がどうあるべきかを考えることが大切だ」と。

「人間とは何か」という問い
正直に申し上げると、私はこのニュースを見たとき、少し意外な気持ちになりました。AIについての議論は、企業や研究機関が先頭に立って語るものだと思っていたからです。なぜ教皇があえてこのテーマを語るのか、最初はそう思いました。
しかし今、世界の様々な場所で「人間とは何か」という問いが語られ始めています。宗教の世界だけではありません。教育の現場でも、企業経営の現場でも、同じ問いが生まれています。考えてみれば、当然のことなのかもしれません。
人間にしかできないことは?
私たちの周りでは、AIが急速に進歩しています。文章を書き、資料を作り、翻訳をし、分析をする。少し前までは何時間もかけて行っていたことを、今では短時間でこなしてしまいます。便利になり、仕事の効率も確かに上がりました。
ただ、その一方で私たちは別の問いを持つようになりました。「人間にしかできないことは、何だろう」と。
知識でしょうか。計算でしょうか。記憶力でしょうか。残念ながら、それらはすでにAIが得意とする領域になりつつあります。では、いったい何が残るのでしょうか。
「会社は結局、人で決まる」
先日、ある経営者の方とお話しする機会がありました。その方はこうおっしゃいました。
「会社は結局、人で決まるんですよ。設備や仕組みも大切です。戦略も大切です。でも最後は人なんです。人と人との信頼、人と人との関係、そして人を思う気持ち。そうしたものが組織を根底で支えているんです」と。
私はその言葉を聞きながら、教皇のメッセージとどこかで重なるように感じました。
大切なのは、人間が人間らしさを失わないこと
人間の尊厳とは、何か特別な言葉ではないのかもしれません。目の前の人を一人の人間として大切にすること。その人の可能性を信じること。違いを認めること。そうした日常の積み重ねの中にこそ、あるものなのではないでしょうか。
AIの進歩を止めることはできません。止める必要もないでしょう。大切なのは、その時代の中で、人間が人間らしさを失わないことではないか、と私は思います。
世界が今、人間性について語り始めている理由は、そこにあるように感じます。
皆さんは、日々の仕事や生活の中で、「人間にしかできないこと」とは何だと思われますか。




