AI時代に問われる人間力【第2回】AIにはできないこととは?
文責:ジェムコ・コーオペレーションズ 松村潔
前回、「人間にしかできないこととは何だろう」という問いについて考えました。今回は、その続きを一緒に考えてみたいと思います。
目次
AIにはどうしても越えられない領域
AIは驚くほど賢くなりました。質問をすれば答えてくれます。資料をつくり、文章も書きます。時には専門家以上の知識を示すこともあります。そうした場面を目にするたびに、「人間の仕事はどんどん減っていくのではないか」と不安を覚える方もいらっしゃるでしょう。その気持ちはよく理解できます。
しかし私は、AIにはどうしても越えられない領域があると考えています。それは「信頼関係を築くこと」です。

誰かを信頼するのはどんな時か?
もちろん、AIは親切な言葉を返してくれ、相談にも乗ってくれます。けれども私たちが本当に誰かを信頼するとき、それはその人の言葉だけからではないはずです。
その人の生き方や姿勢に触れ、その人を理解したとき、はじめて信頼は生まれます。
苦しい時に寄り添ってくれた人。失敗した時に励ましてくれた人。困難な局面で責任を引き受けてくれた人。そうした経験の積み重ねの中でこそ、信頼は育まれます。信頼は知識から生まれるものではありません。その人それぞれが持つ、人間性から生まれるものです。
業績の良い会社には「信頼関係がある」
私は長年、多くの企業や組織と関わってきました。その中で気づいたことがあります。業績の良い会社には、共通して信頼関係があるということです。
上司と部下の信頼、仲間同士の信頼、顧客との信頼。そうした土台がある組織は、困難な局面でも崩れにくいものです。一方で、どれだけ立派な制度や仕組みがあっても、信頼が失われると組織は静かに脆くなっていきます。
信頼という目に見えない価値が大切に
前回のコラムで、教皇レオ14世の文書について触れましたが、それはAIを否定しているわけではありません。むしろ人類の発展に役立つ技術として評価しています。しかし同時に、「人間を中心に置かなければならない」と語っています。私はその言葉に深く共感します。
便利さだけを追い求めると、人との関係が見えなくなることがあります。効率だけを追い求めると、人の気持ちを置き去りにしてしまうことがあります。だからこそ今、信頼という目に見えない価値が、かつてなく大切になっているのだと思います。
大切なのは、人間が人間らしさを失わないこと
人間の尊厳とは、何か特別な言葉ではないのかもしれません。目の前の人を一人の人間として大切にすること。その人の可能性を信じること。違いを認めること。そうした日常の積み重ねの中にこそ、あるものなのではないでしょうか。
AIの進歩を止めることはできません。止める必要もないでしょう。大切なのは、その時代の中で、人間が人間らしさを失わないことではないか、と私は思います。
世界が今、人間性について語り始めている理由は、そこにあるように感じます。
皆さんは、日々の仕事や生活の中で、「人間にしかできないこと」とは何だと思われますか。
人同士の信頼を築くのは人
信頼は一朝一夕には生まれません。日々の約束を守る、相手の話を丁寧に聴く、誠実に向き合い続けるといったことの積み重ねによって、はじめて信頼は築かれます。
AIがどれほど進歩しても、人同士の信頼を築くのは人です。そして、その信頼を生み出す力こそが、人間力の大切な要素ではないでしょうか。
技術が進歩する時代だからこそ、私たちは改めてその価値を見つめ直す必要があるように思います。




