セミナーレポート
経営の質で世界一を目指す「人」基準の経営手法
石合信正氏(T&K TOKA 代表取締役社長兼CEO)
2025年「経営人財育成塾」第2回講演より
経営の質で世界一を目指す「人」基準の経営手法
石合信正氏(T&K TOKA 代表取締役社長兼CEO)
2025年「経営人財育成塾」第2回講演より
Contents 01
ジェムコ日本経営の関連会社であるジェムコ・コーオペレーションズ では、2025年5月から自律したリーダーの育成を目的とした「経営人財育成塾」を開講しています。講師には、経営トップ経験者やマネジメントの専門家を招き、実践的な知識を提供します。
このコラムでは、第1回目と2回目の講師である、石合信正氏(T&K TOKA 代表取締役社長兼CEO)のお話をご紹介させていただきます。今回は、「社員の能力を飛躍的に高める」「ムダを排除」「施策展開による社内の変化」についてお話をいただいた第2回目の講演内容です。
石合信正氏(T&K TOKA 代表取締役社長兼CEO)
Contents 02
日本の組織は、これまではピラミット型組織が中心でした。ピラミット型組織は、「スピード」「情報精度」「責任の所在が見えにくくなる」という3つの弱点があり、主体的にスピードをもって行動できない状態になります。これを解消するには、ピラミット型組織を廃止してフラットな組織にする必要があります。そうすることで、先ほどの弱点を解消し、多様な人材が活躍できる、筋肉質な組織を作ることができるでしょう。
また、誰でも“やらされ仕事”は苦痛に感じます。逆に、夢中になって取り組む仕事は多様な成長をもたらすので、マネジメントスタイルも変えていく必要があります。これからは「支配型」ではなく、「サーバント型」(尽くし、支える)にしていくことが重要です。
Contents 03
企業は一般的に、時間軸の中で成長から衰退への曲線を描くといわれています。しかし、すべての企業が衰退するわけではありません。成熟期・衰退期に入っている企業が再び成長曲線に乗るためには、全社員が経営方針を理解し「攻めの行動」へ転換することが重要です。基本アクションは下記のようなことが挙げられます。
①Why&危機感の共有
全社員と面談し、意思統一と情熱を伝え、共感を得る
②経営方針&具体的行動
経営方針を具体的行動に分解。社員の責任と役割の明確化
③コミュニケーションの徹底活用
社内の一体感を高める。プロジェクト管理表と、その進捗を全社でシェアする
結局のところ、「会社を変えられるのは社員だけ」なのです。企業の成長のためには、社員のモチベーションアップがポイントになります。
セミナーの様子
Contents 04
では、社員のモチベーションを上げるために何が大切でしょうか?まずは、コミュニケーションです。そのために大切なのは、明るい挨拶です。そして「さん」付けでお互いを呼び合うことです。日本の言語体系は複雑です。「社長」と言ったら発言の立ち位置が決まってしまうので話しづらくなります。「さん」付けだと、いい意味で上も下もありません。壁を取っ払って、リスペクトし合って会話ができます。もう一つの理由は、無駄な時間を使わない為です。役職を調べるのは大変ですし、役職定年者、抜擢人事の方なども、「さん」で統一すれば違和感は起こりません。
Contents 05
人事体系は企業によって違いますが、その体系は時代によって変化しています。日本でも「結果が出なくても生き残れる」状態から、「結果が出れば報われる」という、厳格で公正な成果主義へと移行しました。例えば、年功序列の廃止、不公平感の是正などを行うことで、業績を高めるだけではなく、会社のために何ができるか意識できるようになるでしょう。
Contents 06
「貶す・否定する・拒絶する」ことをせず、「褒める・称えること」を基本にすることが重要です。良い行動は徹底的に褒め、皆の前で承認することが重要です。ダメになっている時は、「どういうところを改善していくか」というところに目線をきりかえて対応しましょう。”すべてが伸びしろ”として、決してネガティブにはならないようにします。
Contents 07
社員やチームからの提案を奨励し、責任と権限を委譲することで、活躍の場を広げることができます。私自身の経験の中で大きな成果を上げたものの一つに、働きがい向上プロジェクトとして取り組んだ女性活用があります。14人の女性リーダーを中心とした取り組みで、これは様々な改革の突破口になりました。この時に女性が改革推進に優れていると感じたのは「忖度しない」「視点が高い・幅広い」「明るく楽しく取り組む」ということ。管理職の数としては、まだ活躍は限られている部分はあると思いますが、私は女性の活躍は改革に大きな力を発揮すると思っています。
Contents 08
業務を行っていく中で「早く結果を出さないといけない」ということがあります。その時できることを見つけチャレンジしていかなければなりません。これも私自身の経験ですが、外資系企業にいたとき早く結果を出す方法として、「製品・サービスの価値に応じた価格設定(値上げ)」を敢行したことがあります。当時、「値上げは悪」「もう買ってもらえなくなる」など顧客離れを懸念する声や反対意見が多くありました。しかし実際に試すと、我々の商品の価値を評価していただき、値上げを受け入れていただくことができました。これは、営業社員の貴重な成功体験となり、その後、関わった全員が多岐にわたる分野で大活躍しました。苦しい中、成功体験を得ることはモチベーションアップのためにも重要です。
Contents 09
ブランドは社内求心力であり、外に向かっては訴求力です。インナーブランディングとアウターブランディングの両面でブランドを構築することが重要です。私自身、ブランディングの究極の目的は、企業価値と社内のモチベーション向上と考え、様々な取り組みを行ってきました。在籍したある企業では、社員が主体となってコーポレートロゴやCMを作成、プロスポーツチームのスポンサー活動、書籍出版などを通じて、会社の認知度向上と社員のモチベーション向上に貢献。結果、4年で会社の認知度が倍増したとの調査結果が示されました。
Contents 10
社内の無駄を改善することは重要です。考えるべきは「コスト」と「時間」です。時間については、正しいところに正しく使われているかをしっかり見ていくことが重要です。
私が無駄排除のために、「ワークアウト手法」を活用して取り組んだ事例をご紹介します。この手法は、いらない仕事を辞めてしまおうというもので、GEやウォルマートなどでも実践されています。まず、組織横断でメンバーを選び、メンバーだけで徹底的に討論をして改善案を作ります。その後、トップマネジメントに入ってもらい、その提案をやるかやらないかを即決してもらい、採用された案は即実行します。この方法でいらない仕事と仕組みを無くしていくわけですが、大変スピーディーに取り組むことができました。
Contents 11
このような様々な取り組みをすることで、社員の意識が変わります。これまで私が在籍した企業では、実際に「明るく前向きな思考」「主体性向上」「チャレンジ志向」「積極的コミュニケーション」「チームワーク重視」「リーダーシップ顕在化」などの変化がありました。同時に、第三者機関に依頼して社員アンケートを行い、毎年モニタリングをしたところ、これまで紹介した取り組みを行った結果、肯定的回答率が4年で16%も上がりました。このような社員の意識変化は、行動の変化・業績向上に大きく寄与し、外部環境がどうであれ、目標を達成させようと全員が一丸となって達成させました。製販開の一気通貫での収益改善では、社長の私が司令塔になり、2.5年で成果を出しました。
これまでの話のポイントをまとめると下記の3つになります。
① 会社を変えられるのは社員だけ
② 社員のやる気は仕組みで造る
③ 結果は業績に反映される
Contents 12
日本の会社には、いいところがたくさんあります。外資系の会社は勿論ですが、日本でも業界に関わらず他社のいいところは取り入れていくべきです。そこにエンジンとして「人」、つまり社員のモチベーションを掛け合わせて行動していくことで、働きがいのある会社になるのではないでしょうか。下記のような流れを上手く作っていって、日本起点で世界のロールモデルを発信できるようにしていきたいものです。
▼▼▼前回(第1回目)の記事はこちらからご覧ください▼▼▼
https://www.jemco.co.jp/case/jinzaitk2501/