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JEMCO通信

2025-06-06 デジタル技術を活用した業務改革(DX)

デジタル技術を活用した業務改革(DX)~第7回 市民開発者(Citizen Developer)の時代到来②~

文責:ジェムコ日本経営 秋山和則

IT部門に頼らない業務アプリ開発の新潮流として「市民開発者(Citizen Developer)の時代」が到来してきています。2回にわたって、「市民開発者(Citizen Developer)の時代」についてご紹介します。前回は、市民開発者についてや、市民開発がもたらすメリットなどについて紹介いたしました。今回は、市民開発者とIT部門との理想的な役割分担や、市民開発を成功させるための5つのポイントなどについて紹介いたします。

IT部門との理想的な役割分担

市民開発の成功には、IT部門との適切な役割分担が不可欠です。
【市民開発者の役割】
•業務課題の特定と要件定義
•ノーコード・ローコードツールを使ったアプリケーション開発
•日常的な運用と小規模な改修
•業務視点からのシステム評価と改善提案

【IT部門の役割】
•ガバナンスとセキュリティ対策の策定
•技術的なサポートと相談窓口の提供
•市民開発者のための教育・研修プログラムの提供
•プラットフォームやインフラの整備・管理
•複雑な機能やシステム間連携の実装支援

「IT部門と連携しつつ、直属にならないことで、IT部門の別部門になることなく、市民開発者がITの監視、サポート、セキュリティ要件の恩恵を受けることができます」という関係性が理想的です。

企業の成功事例

様々な企業様でも、このような取り組みが行われています。
例えば、Microsoft Power Platformを活用した事例をご紹介すると、下記のような事例があります。
①市民開発を推進し、食堂予約システムや「出社在宅予定表」の共有システムなどを内製開発し、全社で年間20,000時間の業務時間削減を実現
②AIと自動化をビジネスプロセスに取り入れるために6,000人もの「市民開発者」を育成。従来のソリューション開発におけるコスト高騰の解消や、短期間で解決が求められる課題への迅速な対応

このような事例からみても、市民開発を成功させるためにはいくつかのポイントがあるようです。

市民開発を成功させるための5つのポイント①段階的なスキル育成プログラムの確立

例えば、市民開発者のスキルレベルを「初級」「中級」「上級」というように何段階かの明確なスキルレベルを定義し、それぞれのレベルに応じた教育プログラムを提供することが重要です。e-Learningコンテンツの提供、ハンズオン形式の実習研修、メンター制度の導入などを組み合わせた体系的な育成が効果的です。

市民開発を成功させるための5つのポイント②成功体験の共有と表彰制度の導入

優秀な開発事例を共有し表彰する機会を設けることで、市民開発者のモチベーション向上と組織全体への浸透を図れます。

市民開発を成功させるための5つのポイント③明確なガバナンスとセキュリティ対策

野放図な開発による情報漏洩やセキュリティリスクを防ぐため、開発・運用に関する明確なガイドラインを整備することが不可欠です。特にデータの取り扱いやアクセス権限については厳格なルールが必要です。

市民開発を成功させるための5つのポイント④IT部門によるサポート体制の構築

開発者が困ったときに相談できる窓口の設置や、技術的な支援体制の構築が重要です。IT部門は「管理・制約する側」ではなく「支援・育成する側」に回ることで、市民開発の推進力となります。

市民開発を成功させるための5つのポイント⑤Iデータの標準化と重複開発の防止

各部署で類似機能を持つアプリケーションの乱立を防ぐため、データの標準化と共有化を図ることが重要です。データを起点に「部署特有」と「全社標準」の部分を分離する考え方が有効です。

市民開発が目指す未来

市民開発が最終的に目指すのは、「自分の仕事を自分で変えることができる組織」の実現と「データの主権を取り戻す」ことです。社員一人ひとりがデジタル技術を活用して業務改善を進められる文化が根付くことで、全社的なデジタルリテラシーの向上と継続的なイノベーションの創出につながるでしょう。
IT人材不足が深刻化する中、市民開発者の育成は企業のDX推進における重要な戦略となっています。適切なガバナンスとサポート体制の下で市民開発を推進することで、業務効率化やコスト削減などの大きな成果を上げることができるのです。

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