【ジュニアボードとは?】製造業の次世代リーダーを育て、現場の視点を経営に生かす仕組み①
文責:ジェムコ日本経営
企業が持続的に成長するためには、次世代の経営を担う人材を計画的に育成することが欠かせません。
一方で、若手・中堅社員に経営視点を身につけてもらいたいと考えていても、日常業務のなかで、会社全体の経営課題や事業戦略について考える機会を提供するのは容易ではありません。
特に製造業では、生産、技術、品質、調達、開発、営業など、各部門の専門性が高くなりやすい傾向があります。そのため、自部門の目標や課題には詳しくても、会社全体の収益構造や経営戦略を考える経験を十分に得られないことがあります。
こうした課題への一つのアプローチとして注目されているのが、若手・中堅社員が実際の経営課題について議論し、経営陣に提言する「ジュニアボード制度」です。
2回にわたって解説しますが、今回は、「ジュニアボードとは?」というところから、今注目される理由、導入のメリットなどを紹介します。
目次
ジュニアボードとは
ジュニアボードとは、若手・中堅社員によって構成される「疑似役員会」です。
一般的には、部門の異なるメンバーが集まり、会社が実際に抱えている経営課題について調査や分析を行います。そのうえで議論を重ね、解決策や新たな施策を経営陣に提言します。
正式な取締役会や経営会議とは異なり、ジュニアボードそのものが経営上の意思決定権を持つわけではありません。しかし、参加者が経営課題を自分事として考え、限られた情報や経営資源のなかで判断する経験を得られる点に特徴があります。
座学中心の研修とは異なり、自社の実際の課題を扱うため、参加者は経営に近い視点で考えることを求められます。
例えば、売上や利益だけでなく、設備投資、人材配置、技術開発、市場動向、品質、顧客ニーズなど、複数の要素を踏まえて判断する必要があります。
この経験を通じて、自部門の立場だけで考える「部分最適」から、会社全体にとって何が重要かを考える「全体最適」への視点の変化が期待できます。

ジュニアボードの起源となぜ今注目されているのか
ジュニアボードの起源は、1932年に米国の香辛料メーカー、マコーミック社で導入された青年重役会制度にあるとされています。
歴史のある制度ですが、近年は次世代経営人材の育成、部門間連携、組織風土の変革、若手社員の参画促進といった観点から、改めて関心が寄せられています。
市場環境や技術が急速に変化するなか、企業には、過去の成功体験だけに頼らず、新たな課題に対応できる人材が求められています。しかし、経営視点は、戦略や財務についての知識を学ぶだけで身につくものではありません。
実際の経営では、十分な情報がそろっていない状況で決断したり、短期的な利益と将来への投資のどちらを優先するかを考えたりする必要があります。すべての要望に応えることが難しいなかで、何を選び、何を見送るかを判断する場面もあります。
ジュニアボードは、こうした経営上の問いを若手・中堅社員が考える機会をつくります。経営陣にとっても、普段は届きにくい現場の情報や、異なる世代、部門から見た問題意識に触れる機会になります。
ジュニアボード導入で期待できる3つの効果 ①経営視点を持つ次世代リーダーの育成
ジュニアボードの目的の1つは次世代リーダーの育成。
参加者は、日常業務の範囲を越えて、財務情報、事業戦略、市場環境、顧客動向などに触れます。そのうえで、会社全体の将来を考え、課題の優先順位を決め、解決策を検討します。こうした経験を重ねることで、担当業務を正確に遂行する能力だけでなく、複数の部門や利害関係者を考慮して判断する力の向上が期待できます。
また、活動の過程では、参加者の経営課題に対する思考力、情報収集力、周囲と協働する力、提案を実行につなげる力などを確認できます。
そのようなことから、次世代リーダー候補を発掘する機会にもなります。
ジュニアボード導入で期待できる3つの効果 ②社員の参画意識とエンゲージメントの向上
若手・中堅社員のなかには、自分の意見やアイデアを会社の改善に生かしたいと考えている人もいるでしょう。しかし、現場の社員が経営陣へ直接提案したり、経営課題について意見を交わしたりする機会は限られます。
ジュニアボードは、社員が自社の経営について考え、経営陣へ提言する公式な機会を提供します。
自分たちの提案が経営陣によって真剣に検討され、その一部が会社の取り組みにつながれば、仕事への納得感や自己効力感を持ちやすくなります。
また、経営陣が参加者の意見を尊重し、提案を採用するかどうかだけでなく、その判断理由を丁寧に伝えることで、会社への信頼や参画意識の向上も期待できます。
ただし、ジュニアボードを導入すればいいというわけではありません。参加者の負担、処遇、職場環境、上司との関係などにも配慮し、ほかの人事施策と合わせて運用する必要があります。
ジュニアボード導入で期待できる3つの効果 ③現場の視点を生かした経営課題の解決
経営陣には、会社全体を俯瞰して判断する役割があります。一方で、顧客や製造現場で起きている小さな変化は、経営層まで届く過程で見えにくくなることがあります。
現場に近い社員は、顧客の要望、設備や工程の問題、社内制度の使いにくさ、部門間の連携不足など、日々の業務を通じてさまざまな気づきを得ています。ジュニアボードを設けることで、こうした現場の気づきや問題意識を整理し、経営課題として検討できます。
また、異なる部門の社員が議論することで、一つの部門だけでは気づかなかった原因や解決策が見つかる可能性もあり、新規事業、業務改革、新製品開発、組織改革などにつながる提案が生まれることも期待できます。
次回はジュニアボードで検討できるテーマなどを考えていきます。




