ナフサ不足が製造業に与える影響とは?【第1回】「原料がない」ではなく、「回らない」が起きている
文責:ジェムコ・コーオペレーションズ 松村潔
ここ最近、製造業の現場でよく聞く言葉があります。「材料が入らない」 「納期が読めない」 「見積もりが出せない」・・・。その背景にあるのが、“ナフサ不足”です。
ナフサとは何か?
“ナフサ不足”という言葉を、最近よく耳にします。
ナフサという言葉は、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。しかし実は、プラスチック、ゴム、塗料、接着剤、包装フィルムなど、日本の製造業を支える極めて重要な原料です。

ナフサ不足の引き金は、中東情勢の緊迫化
私は多くの製造現場の方々と話をしていますが、現場で起きているのは単純な「原料不足」ではありません。正確に言えば、「物流と供給網そのものが詰まり始めている」という状態です。
現在のナフサ不足の引き金になっているのは、中東情勢の緊迫化です。日本はナフサの大部分を中東に依存しています。特にホルムズ海峡周辺の物流が不安定になると、一気に国内供給へ影響が波及します。
ここで重要なのは、日本には大量の石油備蓄があるにもかかわらず、ナフサ自体は国家備蓄の対象外だという点です。ガソリンや軽油などの燃料は優先的に守られます。しかし、化学原料であるナフサは民間在庫頼みです。つまり、原油が不足していなくても、製造業向けの素材だけ先に苦しくなる構造があるのです。
製造業にとって怖いのは「供給網の目詰まり」
さらに現場では、「必要以上の発注」が連鎖的に発生しています。
ある企業は「止まると困るから少し多めに」発注する。 すると商社は「さらに不足するかもしれない」と考え、もっと多めに確保に動く。結果として、本来必要な量を超えた“幻の需要”が発生し、港・物流・タンク・輸送車両が一気に逼迫します。
私はこれを、“モノがないのではなく、流れが止まり始めている状態”だと感じています。
実際、港には荷物がある。しかし、そこから先へ運べない。製造業にとって本当に怖いのは、この「供給網の目詰まり」です。
しかも厄介なのは、こうした混乱が突然表面化するのではなく、じわじわ広がることです。
最初は樹脂。次に塗料。その後、パッキンやOリングのような小物部品。最後には「たった 100 円の部品がないだけで、数千万円の設備が止まる」という事態に発展しかねません。
今、製造業に必要なのは?
今、製造業に必要なのは、「まだ大丈夫」と考えることではなく、“供給が乱れた時にどう生き残るか”を具体的に考え始めることではないでしょうか。
次回は、「実際に製造現場で何が起きているのか」、特に住宅設備・自動車・機械業界で始まっている異変について整理していきます。




