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JEMCO通信

2019-05-15 コンサルティング トピックス

企業における防火・防災に関する諸問題とその対策 第2回:工場・倉庫火災による被害拡大危機の要因とその問題点<前編>

文責:ニュービジネス開発事業部   防災技術コンサルタント(元、政令指定都市消防署長) 松田 雄治

サービスの概要:https://www.jemco.co.jp/newspage/archives/22

■被害が拡大する3つの主な要因

最初に工場や倉庫で火災が発生した場合、その被害が拡大する主な要因としては次の3項目が考えられます。

それぞれについて順に説明し問題の所在について検討していきます。

①工場・倉庫の規模(一棟の面積や体積)の拡大

②既存施設の既存不適格と施設・設備の老朽化

③法的規制の枠組みの限界(こちらは次号でご案内いたします)

■①工場・倉庫の規模

まず①の工場・倉庫の規模の拡大についてです。

これは、工場や倉庫の効率化を追求することによる規模の拡大があります。工場の場合には、製品管理の必要性から一連の製造工程を一棟の工場内で行う必要があります。しかしながら、大規模な製造ラインが大空間の工場に設置され、建築物の内部を一定面積以下に区画する”面積区画”にすることが困難であり、そのため、特に製品が可燃物であり、工程の中でそれぞれが連続して配置されていれば、一旦火災になった場合、延焼を阻止することは極めて困難になります。倉庫についても同様です。

昨今、物流の効率化により、拠点となる倉庫の規模は必然的に大きくなりました。しかも倉庫については、様々な物品が貯蔵されていることもあり、またより貯蔵物品の密度も高く、可燃物量は膨大で一旦火災となれば、建築基準法で求められている1,500㎡の防火区画があっても、防火シャッターによる区画形成に失敗すれば、(大空間内を多くの防火シャッター等で迅速に区画形成するのは現実的に非常に困難)延焼を阻止することは極めて困難です。どちらにしても、各事業所の自衛消防の組織が消火器や屋外消火栓、屋内消火栓により初期消火ができれば問題ないのですが、過去の火災事例を見ると必ずしも早い段階で消火に成功できるとは言えないのが現状のようです。

■②既存施設の既存不適格と施設・設備の老朽化

次に、②の既存施設の既存不適格と施設・設備の老朽化についてです。

特に工場部門が該当しているところが多いと思われます。戦後から長く操業を続けてきた工場群については、建設から年月も経過し、建物構造や製造設備など、まだ補修や改修が十分になされていない古いものが残っているところもあると思われます。そこは、防火区間や消防用設備について旧基準は満たしており法令違反ではないが、現行の設置基準の安全基準が水準に達していない建築物(既存不適格対象物といわれる)になると考えられます。このような建築物の場合、製品の製造設備については、積極的に新規設備の導入はされることはありますが、その他の施設や、製造に直接影響しない消防用設備等については、後回しになる傾向が多いようです。

特に近年は、新たな業態の事業所や建築物の大規模化、多機能化により発生した火災の延焼拡大状況なども複雑多様化しています。現在消防用設備についても、その実態に即した性能規定化による多様化が進んでおり、操作しやすい屋内消火栓設備や、感知能力の高い感知器や各種の自動消火設備等についても開発が進み、従前の消防用設備より各種の性能の向上したものが開発されています。しかし、このような既存不適格の建築物については、既存の設備の更新がなされないまま、知らないうちに現在の防火基準で一般的に求められている水準から取り残されている状況になっている可能性があるのです。

次回は、③法的規制の枠組みの限界についてです。

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株式会社 ジェムコ日本経営

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