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JEMCO通信

2015-06-24 海外のコンサルの現場から

グローバル展開の現場から|海外でよくある問題と対応|第十回 リスク対策について(その4)

文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 高橋功吉  

 

前回は、安全について述べた。今回は、税務リスクについて述べることにする。これは、海外拠点ということだけの話しではなく、全社的に徹底すべきことなのだが、特に海外に赴任される方の中には、税務についての知識がないまま、税務調査で多額の追徴という事態に陥り、驚かれるということもある。税務の専門家ではなくても、海外で仕事をする以上、基本的な事項についてはおさえておきたい。 

 

◆移転価格問題 

 もともと、どの国でも税務調査に入る目的は、少しでも税金をとりたいという目的で調査が行なわれる。そこで先ずチェックされるのが移転価格だ。よくご存じの方も多いと思うが、日本を含めたグループ企業が存在し、グループ企業への取引がある場合、その取引価格の妥当性をチェックされる。例えば、グループ外の企業に100円で売られているものを、グループ企業には80円で販売していたとすれば、20円分の利益が移転されていると判断され、それらについては本来利益があったはずとして税金が追徴されることになる。うちの拠点は儲かっているからグループ企業には安く売ってあげても問題ないというような安易な判断をしてしまうと大変なことになるということだ。 

ちなみに、移転価格の設定には、大きく次の3つが基本となる。

 

1.独立価格比準法(CUP法:Comparable Uncontrolled Price Method)

 

2.再販売価格基準法(RP法:Resale Price method):

 

3.原価基準法(CP法:Cost Plus Method):

 

ここでは、これらの解説は省略するが、大切なことは、税務調査が入っても、それが適切な価格設定であることを示せるようにしておくことである。実際に、海外でも税務調査が入ると、資本関係を含めた関係企業のリスト、関係企業との取引内容等の資料の提示が求められる。そういう意味では、どの方法で移転価格を設定するのかを決め、それに基づいて価格設定がされるようにしておくことが望ましい。日頃から税務調査はあるものという前提で、これらの基本を理解して経営の舵取りをすることが必要と言える。また、事前確認制度を活用して、事前に税務当局に関係会社との取引価格が独立価格であることを確認するというのも方法だ。 


◆出向者の個人所得課税問題
 

たまたま、筆者が海外拠点の経営診断をさせていただいた企業でも見つかったことがあるのだが、出向者の個人所得が合算されずに申告されているという問題だ。出向者の所得は現地給だけではなく、日本で支払われる留守宅手当等も含めて合算して申告する必要があるのだが、現地での支払い分だけしか申告していないと、多額の追徴をされるというケースがある。実際、インドで現地給だけでしか申告していなかったのが、日本で国内給が支払われていることが知られてしまい、多額の追徴をされる事態になったという企業もある。この原因は、個人所得税の管理をする部門がこれらを知らなかったり、日本の国内給の情報が伝えられる仕組みができていなかったりということが原因だが、このようなことのないように、仕組み面も整備しておくことが必要だ。赴任を終えて、帰任しようとしたら、出国時に税関で納税が完了しているかチェックされるという例さえある。 


◆全社的に税務リスクの啓蒙も必要
 

日本から海外拠点に出張する場合一つも、目的によって、その費用を日本が負担すべきか、海外拠点が負担すべきが違ってくる。海外拠点に支援に行くのであれば、当然、渡航費と共に支援費も海外拠点が負担すべきだ。そうではなく、グローバル本社として監査に行くというのであれば、これはグローバル本社の仕事ということになるので日本で負担ということになる。出張申請用紙の中に、海外支援と記載すれば、当然、海外拠点から支援料をもらっているはずということになってしまう。安易に「支援と書いておいた方が体裁が良い」というような申請書の書き方をしてしまうと、追徴を受ける原因になってしまう。そういう意味でも、全社的に税務リスクの啓蒙も必要と言える。 

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