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JEMCO通信

2023-09-13 コンサルティング トピックス 物流・SCMのこれから

サプライチェーン・マネジメント(SCM)について<第2回・情報の流れ(見込生産の場合)>

文責:ジェムコ日本経営

サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは、直訳すると「供給連鎖の管理」。サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売までの全体の一連の流れ)を総合的に見直して、生産や販売の最適化・効率化を図る経営手法です。

サプライチェーンを物流と同一視しがちですが、物流は実際にはサプライチェーンの構成要素の一つにすぎません。
サプライチェーンは「モノの流れ」と「情報の流れ」から見ることができます。今回のコラムでは、3回にわたり「見込生産の場合で、日本で商品を製造して、海外に出荷・販売するときの流れ」についてみていきます。

2回目の今回は、「モノの流れ<日本で商品を製造、海外へ出荷する場合>」について解説します。

モノの流れ<日本で商品を製造、海外へ出荷する場合>

このようなモノの流れが発生するためには、その前に、生産形態を決める必要があります。
モノを作るときの生産形態は大きく分けると、「受注生産」「見込生産」の2つになります。

□受注生産
受注を受けてから生産を開始する
□見込生産
受注を受ける前に生産を開始する

今回は、見込生産における情報の流れを見ていきます。

見込み生産は受注を受ける前に生産をするので、「需要予測」するとことが重要になってきます。需要予測をベースに「生産計画」を立て、それをもとに原材料、部材をそろえるための「調達計画」を立て、さらに、品物を出荷するときの「出荷計画」を立てることになります。

□需要予測
自社の提供するモノやサービスの短期的あるいは長期的な需要を予測すること
□生産計画
どの製品を、どのくらいの数、どのくらいの納期で生産するかを取り決めること
□調達計画
どの商品を、どのくらいの数、どのくらいの量で調達するかを取り決めること
□出荷計画
商品の出荷のための準備と指示を行うこと

ちなみに、需要予測をするのは営業部門、生産計画は生産管理部門、調達計画は調達部門、出荷計画はロジスティック部門であることが多いと思います。また、複数の工場で生産がある場合は、リンクして計画を立てることもあります。

見込生産で問題となる概念「リードタイム」

ここでも問題が生じます。それは、モノを調達して、生産するまでの間にもリードタイムがあるということです。
一回目で、「洋上で数か月かかる」という話をしましたが、部材メーカーが原料を用意して、工場に納入するためにも、当然リードタイムがあります。モノによっては数か月前に発注しておかないと届かない、ということもあるわけです。

では、需要予測して生産計画、調達計画、出荷計画を立て、それを実行することを考えたとき、重要予測はどれくらい前から行う必要があるのでしょうか?リードタイムを加味したうえで検討しなければなりません。

このように、見込み生産をするとき、必ず「リードタイム」という概念が邪魔になって、それが在庫を生む一つの要因になっています。需要予測をいくら正確に行ったつもりでも、だいぶ早い段階で予測することになるので、予測通りにいかないことが多く、どうしても誤差は生じます。この誤差が在庫を生むと同時に、欠品につながるんです。

例えば、コロナウイルスの流行などは誰もが予測できなかったと思います。自粛期間のすごもり需要で思わぬ人気が出た商品もあったかと思いますが、それらは事前に予測はできていないから、「欠品」という売りそこないを生んでしまったケースもよくお聞きします。

また、「欠品=売り損なう」ということなので、利益が減ることにつながります。そして、顧客側から見ると「欲しいものが手に入らない」という状態になっているわけです。そうすると、欠品を起こさない企業に仕事を取られてしまうということにもなりかねませんし、納期と数量に対する信頼性の低下にもつながります。
これらの「在庫」と「欠品」、そしてモノを運ぶときにかかる「物流費」、この3つがサプライチェーン上の一番大きい問題になります。

実態を把握するには「PSI」の見える化がカギに

サプライチェーンでは、例えば、ヨーロッパなど、遠いところに運ぶ必要があるほど、長さの問題が出てきます。ではその問題はどういうことでおこるかというと、長い問題の話だけに、いろいろなところに原因があります。ここでは、よくある原因についてお話します。

例えば、販売会社が海外ににあったとき、「売りの実態」「在庫の実態」など、いろいろな実態が見えづらい、ということがよく起こります。
販売会社は売りを主体とする企業です。日本でも営業マンというのは、在庫よりも欠品を恐れるのと同じ構造で、販売会社からすると「モノさえあればいい」という発想になりがちです。
また、販売会社自体にかなりの裁量がある場合もあります。そのような時、裁量を持たせすぎたがゆえに、本社の指示を聞かなくなってしまう、という企業も少なくはありません。

このような実態を一言でいうと「PSI」が見えないということになるかと思います。

P・・・Purchase(購入)※販売会社の人から見たとき
S・・・Sales(販売計画)
I・・・Inventory(在庫)

なにをもって、見える・見えないとするかは定義次第ではありますが「PSIが見えない」というのは、よくある問題であり、重要な課題です。本社からしてみれば、「物流費、在庫、欠品などをコントロールしようと思ってもしきれない」という問題になるわけです。

在庫は、1つ1つの最小単位で管理するしかありません。例えば、同じブランドのペンで黒と赤があったとき、それは同じと考えていいのかと言ったら違います。お客さんからしたら、「黒が欲しい」「赤が欲しい」というように、形が一緒でも違うものであり、1つ1つが在庫管理の対象になります。

一般的に最終消費財を扱っている企業は、取扱点数が何万点になることもあります。そういう時に「それぞれ1つ1つPSIを見ていきましょう」といっても一般的にはできないことが多いのが現状です。だから、PSIが見えないという状況のまま、放置されてきているわけです。

最終回となる3回目では「SCMの考え方」について解説します。

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